ナイトクラブとヲタ芸。コラボレーションを通じて見えたサブカルチャーとしてのヲタ芸の新たな地平とは。【イベントレポート】【(marunouchi) HOUSE / ニューみるく】
イベントの概要
2024年6月8日に東京駅の新丸の内ビルディング7階(marunouchi)HOUSE 内にあるニューみるくというバーにて行われた西原健一郎さん主催のDJライブにて、演出・ディレクターとして白狐とパフォーマーとしてゆーきちがヲタ芸を披露させていただきました。
本イベントでは、サウンドディレクター・作曲家・選曲家・プロデューサー・DJの西原健一郎さんをはじめとして、ゲストにネオソウル・シンガーのTamalaさん、フルート奏者で作曲家の松村拓海さん、銀座の老舗「空也もなか」の方で(なんと差し入れでいただいてしまいました、、!嬉しい!)今回のイベントプロデュース&DJ を務めるDJ Hikoさんなど非常に豪華な面々との共演の元、18~23時の5時間開催されました。
東京のナイトクラブでヲタ芸が起用された訳
今度東京駅のバーでイベントをやるから何かヲタ芸で面白いことやろうよと西原さんから私、白狐にお声がけいただいたのがきっかけ。
西原さん曰く、「ホテルやレストランなどもいいが、音楽主体で何にも忖度なく定期的にパーティすることがひとつのDJカルチャーの意義だったなと。近年コロナ禍で考えていたこと。ここはアートに寄らず「賑やかし」とか「祭り」的な、新しいDJカルチャーの盛り上げ役としてお客さんや関係者を巻き込んでサイリウム自体を上の世代まで広く認知してもらうことも面白いんじゃないか」との言葉をいただき、白狐が演出・ディレクション役として進めることになりました。
そんな西原さんの言葉を受け、白狐がイメージしたのは「酔いながら見れるヲタ芸の新しい形」。
従来のヲタ芸の全力で体を動かして情熱的な動きよりも情緒的な、しっとりしたパフォーマンスがマッチすると判断し、今回のパフォーマーであるゆーきちにテーマとして与え、世界観のすり合わせを行いました。
白狐の狙いとしては、今でこそメジャーな文化になりつつありますが、かつてのマイノリティであるオタクカルチャーをルーツとする「ヲタ芸」が東京駅のナイトクラブやバーという場所で再構成・再定義されることにより、かつてアメリカの都市部の黒人ラテン系同性愛者の「ボール・ルーム」と呼ばれたシーンから発展し、ゲイのクラブシーンで様式化されたストリートダンスである「ヴォーグダンス」の様な新しい風を感じさせること。
そうすることにより、アンダーグラウンドカルチャーである「ヲタ芸」が今までにない形で世間に認められる可能性もあると考えていました。
ナイトクラブ・バーという場所でのヲタ芸パフォーマンスの反響は?
パフォーマンスは計二回、どちらも西原さんのオリジナル楽曲でのパフォーマンスとなりました。
白狐とゆーきちで世界観を擦り合わせたのち、ゆーきちがアドリブを交えつつの演舞。
一回目のパフォーマンスではゆーきちが観客の中からいきなりサイリウムを光らせてフロアに出てくるサプライズ的な演出。
西原さんのジャズ楽曲とフルート演奏、サイリウムの光がミックスされ、なんとも言葉にし難い情緒が生まれていました。
会場の皆さんも音楽に合わせて踊っていたり、サイリウムを振ったり自由に楽しみつつもとても盛り上がっていただけました。
二回目のパフォーマンス時にはお客さんにブルーのサイリウムを配布しての空間演出も行いました。
会場が青い光で満たされる光景は今でも鮮明に思い出すことができます。
お客さんが光を実際に手にして振ったり踊ったりすることで観客側もパフォーマンスの一部となるようなインタラクティブな演出になったのではと思います。
パフォーマンス後は色んな方が「とても良かった!」「かっこよかった!」と声をかけてくれ、お客さんも満足していただけた様子。
関係者からのコメント
ゆーきちさんより
こういった場所でパフォーマンスするのは初めてですごく緊張しましたが、盛り上がってくれて、あたたかい雰囲気で踊ることが出来たので楽しかったです!
使ったサイリウムを渡してみたり、一緒に手を振ったりしてみたりとお客さんと一体となって楽しむ空間になっていて、この距離感だからこそ生まれるものもあるんだな〜という発見もあり僕にとっても新鮮な体験でした。
西原健一郎さんより
好きなものや好きなことって、どのように自分の中に湧き起こってくるのだろうと幼少期から不思議に思っていた。
様々な影響が後天的に与えられて、例えば「みんな持ってるから欲しい。」というような欲望喚起のシステム。
そういうものから逃れられなかったとしても、やっぱり自分の根源的なものと共鳴し一瞬で撃ち抜かれるように好きになるものってある気がする。
そんな感じでハマったDJやクラブカルチャー、ダンスミュージックなどなど。90年代初頭にはまだまだ一般的とは言えなかったが、自分の生き方を変えられるほどにその未来を切り開く力に感化された。そして実際に音楽を取り巻く環境ごと世界はどんどん変わっていった。
DJもラップもテレビで普通に見られる時代になった今、なお僕は音楽の現場に見たことのないカウンター的な何かをいつも求めている。
歴史や文脈なんて実はどうでもいい。それはずっと後に評価される段階で辿々しく解釈されればそれでよい。
サイリウムの光はきっとシンプルに誰かを撃ち抜ぬく何かであると直感できた。
Kenichiro Nishihara
終わりに
ヲタ芸文化はまだパフォーマンスとして発展し初めて10年ちょっとの出来立てほやほやの文化。
ナイトクラブ×ヲタ芸の前代未聞のコラボレーションは始まったばかりですし、今後どんな景色を見せてくれるのか私個人としてもとても楽しみな領域です。
アイドルに「捧げる」動きであったヲタ芸やオタクというマイノリティが「おもてなし」や「茶の湯」「歌舞伎者」などの日本文化や様々な社会的な文脈上で発展していくヲタ芸の姿にも期待しており、今後もヲタ芸の新たな可能性を模索し続けたいと思っています。