【リュウセイグンvol.9】バトルレポート:最強の男、ゆーきち

最も輝きを放った一筋の流星が、皆の目指す目標になる。

それぞれのプレイヤーが輝くサイリウムを握りしめ、己の意志を、力を、生き様を表現する。
ヲタ芸には、「バトル」という文化が確かに存在する。
多くのプレイヤーが栄冠を求め1つの会場に集い、それぞれの戦う理由を込めてぶつかり合う。

関東のヲタ芸バトルイベントとなれば、必ず名前が上がると言ってもいい「リュウセイグン」も、そんなバトルイベントの一つだ。

打ち師それぞれが輝ける場所を作りたい。打ち師みんなが星になって流星群を作れるようなイベントにしたい。

そういった由来から名付けられ開催されるこのイベント。この日10月5日、満を持して9回目の開催となる。
東京は秋葉原、いわゆる「オタクの街」とも称される街の、少し繁華街から離れたダンススタジオ。その中で多くのプレイヤーが引いていく光の軌道の数々は、さながら流星群のように見えるだろう。

今回参加し、審査を受ける人数は54人。本戦に上がる人数が一般的には8人のところを16人と多めに設定されてはいたものの、前回と比べ参加人数そのものが膨れ上がった今回では狭き門に変わった。
数十人が一堂に会し戦い続ける予選をよじ登り、その後何回も訪れるトーナメント形式を勝ち上がる。その過程で上澄みが選別されていく様は、さながら鯉の滝登りだ。

 

そんな過酷な急流を、見事に登り切った者がいた。

 

奈良県出身21歳、ゆーきち。過去にも数多くのバトルイベントを制し、さらにはヲタ芸界のトップレベルのチームに複数所属する、言わずと知れた強豪だ。
CPRace2021での1位。つまり年間王者、ヲタ芸日本一にもなった経験もある彼は、今もなお数多くのバトルに参戦し、己の持つ輝きは誰にも劣らないと証明し続ける。
だが、それにしてもそこまで勝てるというのは、いったい何が勝利の秘訣なのだろうか。

今回は彼にフォーカスを当て、その一端を垣間見ようと思う。

 

改めてバトルのシステムとしては、予選課題曲から選曲し上位16位上がりで本戦へ。
本戦からはDJクロフォードKOYUBIがランダムに選曲した曲を背景にトーナメントでの戦いとなる。
ジャッジはリュウセイグンお馴染みのヲタ芸マイメロディ、HIDEに加え、伝説のヲタ芸チームの元メンバーであるよしき、さらには名古屋が生んだヲタ芸エイリアンことミザエルが担当。
MCは女性声優大好き、自称新人女性声優のアルケー(男性)。

それぞれ前回とは少々異なったメンバーであり、どのような結果に変化するのか。
54名の参加者の頂点が決まる一日。その始まりを告げる予選が今、幕を開けた。

プレイヤー紹介

ゆーきち

画像

◇所属チーム

・【Team MoB
・【BKST~僕の考えた最強のトーチ軍団~
・ヲタ芸創始者チーム【GinyuforcE】(解散済)

 

◇バトル戦績

・War For Wotagei Online ソロ部門 4位(2020/11/30)
・NAGOYA ROMANCE PARK2 優勝(2021/07/17)
・OSAKA ROMANCE PARK3 ベスト4 (2021/9/19)
・TOKYO ROMANCE PARK10 準優勝
     └CPRaceTour 2021 総合優勝 (2021/10/09)
・トーロマEX ベスト4(2022/11/20)
・エルニーニョオンライン 2位(2023/10/1)
・GinyuforcE LAST BATTLE ベスト4(2024/02/03)
・ヲタ芸実力派決定戦「天下一」 3位(2024/03/29)
・第二回ヲタ芸実力派決定戦「天下一」 3位(2024/06/23)
・光博杯 ベスト8(2024/07/27)
・Reワメモ杯 優勝(2024/08/03)
・リュウセイグンvol.9 優勝(2024/10/05)

予選

予選ラウンド、参加者は欠席者・最後に乱入した運営メンバーを抜きにすれば54人。ゆーきちのエントリーNo.は11番。

比較的早い順番で回ってきた出番。序盤に演じられたムーヴが、会場全体を破壊の渦に飲み込んでいくことになる。

当日のムーヴ↓

 

アルケー「エントリーネーム、ゆーきち!バトル~?」

オーディエンス「「「「「スタート!!!」」」」」

予選は事前に運営が設定した課題曲を選んでの出場となる。ゆーきちが選択した課題曲は柊マグネタイト作曲のカノン。ゆーきちは以前からこの曲が好きだと公言しており、数ある課題曲の中でも特に思い入れがあるこの曲を選択したことは想像に難くない。オーディエンスからも「だよな」という声がちらほらと上がる。

しかし、ここからゆーきちのムーヴはオーディエンスの予想を大きく超えることとなる。
ヲタ芸ではBメロの終盤であるサビ直前にオーディエンスが「チェック、セット、オープン!」と掛け声を上げることでムーヴが始まることが通例だが、ゆーきちはサイリウムを焚いた直後、Bメロの中盤から既に怒涛の音ハメを開始する。

そもそも音ハメという文化はヲタ芸界隈においてはバトルにおいてもいまだに浸透しきった文化ではなく、音を忠実に拾ったムーヴは基本的に「臨機応変にムーヴを変えられるダンスムーヴが得意な打ち師」や「バトル慣れした強豪」の専売特許である。

本来審査基準になるのはサビの技2連分だが、オーディエンスの予想を良い意味で裏切る「バトル強者のダンスムーヴ」に、もともと期待感が高まっていた会場のボルテージは最大限に高まった。会場の空気までも塗り替えて自分色に染め上げるのがゆーきちのバトルだ。

サビ前半、放たれた技はCliffordオリジナル「エルトリックス」。ヲタ芸×ダンスをコンセプトに作成された、アイソレーションを駆使して音を拾う高難易度技だ。
しかしこのエルトリックスは製作者のClifford曰く小技に分類される。フリームーヴの合間にアレンジを挟みつつ繰り出す技であり、どうアレンジするかはゆーきち次第だ。

案の定、ゆーきちはカノンの音に合わせた音を拾うアレンジで己の解釈を表現していく。柊マグネタイト曲の特徴である大量の音を丁寧に広い、歯切れのいいサビのメロディに合わせるように体重を乗せていく様はまるで流麗なオルゴールのピンのようであり、オーディエンスからも「うわぉ~!」と感嘆の声が漏れる。
そして器用にねぷオリジナル「呂玲綺」のムーヴを踏み、繋ぎの音まで拾いながら左足を軸に直立体勢へ。

 

サビ後半、放たれた技はゆーきちオリジナル「青雀」。ゆーきちのオリジナル技である【鳥シリーズ】の1つであり、直立体勢から一気に初動の踏み込み切り裂く動きが特徴の機動力の高い技だ。

初動の踏み込み、切り裂きの時点で技の内容に気付いたオーディエンスが歓喜の声を上げる中、ゆーきちは歌詞ハメ音ハメも混ざったアレンジに突入。全身の可動域を余すことなく繰り出されるムーヴに、もはや会場からは「あーあ笑」と笑い声しか出てこない。

圧倒的なムーヴでライバル全員の心を折り乾ききった会場を、サビ終わりの細かい音すら拾って盛り上げ直し、ゆーきちの予選ムーヴが終了した。

 

予選ラウンド ゆーきち

HIDE95点  よしき85点  ミザエル91点   総合271点  予選1位通過

 

HIDE「90点オーバーは普通出ないんですよね。ゆーきちは普通じゃなかったんで出ちゃいました」

2位に12点もの大差をつけ、圧勝。

 

本戦1回戦目 ゆーきちvsきよはる

本戦1戦目、最初のマッチとなったのは1位ゆーきちvs16位きよはる
茨城出身2006年代生まれのきよはるは、Re_deltaのしすてぃーを尊師と仰ぎ、しすてぃーひいてはそのまたさらに尊師である夜瞑が得意とする、いわゆる「中国技」を得意とする打ち師だ。
ヲタ芸歴2年半という歴の若さながらしっかりと基礎を固め、多くの先輩プレイヤーを追い抜いて本戦に上がってきた実力は侮れない。

ゆーきち「きよはるさんは当日まであまり存じていなかったのですが、予選を見た時一目でしすてぃーさんをリスペクトしている方だとわかりました。自分より長身で手足も長く、基礎力がしっかり備わっていたので侮れない相手だと感じていました。」

じゃんけんで勝ったのはゆーきち。本来ヲタ芸の1vs1バトルは後攻有利と言われるが、ここであえて先攻を選んだ。

ゆーきち「じゃんけん勝った時毎回先行選ぶ理由は普通にその方がかっこいいからです」

本戦はDJの選んだ曲がランダムに流れるルールとなっており、ここで流れた曲は「劇場版 ハヤテのごとく!」より僕ら、駆け行く空へ

実際のムーヴ↓

サビ前半、ゆーきちが選んだのはぴーくんオリジナル「ドライガースピア」。ヲタ芸の技の中の王道、「ドラグーンスピア」の派生であり、虎とライオンの交雑種「ライガー」の名を冠するベイブレードのコマをイメージした、終盤の爪で切り裂くような斬りが特徴の技だ。

ゆーきち「いつも決勝まで勝ち進んで優勝することをしっかりと見据えてバトルに臨んでいるのですが、本戦で負けることが今まで多かったため、着実に次のバトルへと駒を進めるために最近はかなり技の選択にこだわっています。
出し惜しみしても負けてしまうし、かといって飛ばしすぎても優勝が遠のいてしまう。相手や自身のコンディションに合わせながら、適切な技を選び抜きました。」

「まず一連目の『ドライガースピア』は僕が使用する技の中でも基礎技に比較的近く、相手との技術差をしっかりと見せる目的で使用しました。」

今回の対戦相手であるきよはるは、年齢だけではなくヲタ芸の歴においてもゆーきちにとっては後輩にあたる。
もともと個性を前面に押し出し「自分にしかできないこと」を押し付けるスタイルのゆーきちだが、ここではあえて自身の得意な技の中でも基礎に近い技を選択することで、相手とあえて評価軸を揃え純粋な基礎力で勝負する、「先輩の威厳」を示した形だ。

ゆえに本番のパフォーマンスも丁寧に。1つ1つのシルエットを大切に、しかし自分の個性を損なわず。その絶妙なバランスを保った渋いパフォーマンスに、予選では圧倒的な個性に笑いまで漏れていたオーディエンスも玄人の顔に。足を大きく上げるアレンジも加わり、歓声が抑えられた会場に床を踏みしめる足音と音楽が響く。

そしてサビ後半、繰り出すのはねこじたオリジナル「//:command.」。こちらは基本に忠実な1連目とは打って変わった、終盤の疾走感が特徴の技だ。

ゆーきち「二連目の『//:command.』はバトルでの手札を増やす過程で最近使いだしたもので、同じ出身の奈良勢『ねこじた』さんのオリジナル技です。『朧刀』『朧剣』など元々この方のオリジナル技を多く使っていたのもあり体に馴染みやすく、アレンジを加えて自身の持ち味であるスピードを活かしたムーブを披露しました。このように系統の違う2つの技を通し、多方面から自身の強みをアピールすることで確実に勝利を掴み取りにいきました。」

序盤はゆっくりと、後半になるにつれ加速していくムーヴの中、ゆーきちのもう1つの強みでもある”シルエットの美しさ”が光る。

最後も疾走感を損なわずに締め、ゆーきちのムーヴが終了。

 

そして後攻、きよはるのターンに移る。

実際のムーヴ↓

流れた曲は「アニメ ささみさん@がんばらない」よりAlteration

きよはる「このとき曲分からなくてなにやればいいかわからない状態で考えたら焚くの早すぎで自分でもびびりました。」

きよはるにとっては未知の曲だったこともありサイリウムを焚くタイミングは早かったものの、観客の「チェック、セット、オープン!」の掛け声に即座に対応して始動する対応力の高さが伺える。

サビ前半、きよはるが繰り出したのは夜瞑オリジナル「青龍」。中国発祥、武道の型を彷彿とさせるシルエットの魅せ方がポイントの技だ。

強豪に対しても物怖じせずポイントを拾っていく堅実かつ上手いムーヴに、オーディエンスからも「良いよ!」と応援の声が上がる。特に終盤足を引く部分では、先ほどのゆーきちのドライガースピアよりさらに大きな足音が響き渡り、シルエットの美しさも相まって会場がさらに沸き上がる。

そして2連目、放たれたのは時雨オリジナル「阿修羅丸」。こちらは先ほどの青龍とは異なり序盤はヲタ芸の基本技である「ムラマサ」の動きを踏襲するものの、中盤から一気にシルエットや世界観を演出する技だ。

シルエットや世界観を演出する中国技が得意なきよはるだが、日本発祥のこの技も得意な分野であることに違いない。
“青龍”で演出した拳法風の世界観から一転、刀を扱うような納刀、抜刀。まるで剣豪のような雰囲気を纏う武人らしさをアピールし、きよはるもパフォーマンスを終了した。

アルケー「ではいきましょう!3、2、1、ジャッジ!」

ゆーきち 3-0 きよはる

新進気鋭の勢いを見せたきよはるだったが、今回はゆーきちの基礎力の高さの前に敗退。
しかしこのバトルを通じて確実に実力の一端が窺えた。きよはるの今後の活躍にも期待したい。

 

 

 

本戦準々決勝 ゆーきちvsぺー

本戦2戦目は1戦目とは空気が違う。
なぜなら予選の中で自分の輝きを見せることで進出が決まる1戦目とは違い、2戦目の準々決勝からは「1vs1での勝負を勝ち抜いた者だけが立てる」ステージだからだ。

そして当然ながら、2戦目からは名の知れた強豪、いわゆる「バトラー」たちの名が多く残ることになる。

ここでゆーきちの対戦相手として現れたのはぺー

福島県出身2004年生まれ、ヲタ芸チーム【夜のさえずり】所属。
福島から上京してヲタ芸バトルの場に姿を現して以降、多くのバトルで「予選上がり常連」の名を恣にする強豪であり、
前回のリュウセイグンvol.8では優勝に輝いた前回王者である。

オールラウンダーとしてあらゆる技を使いこなす他、強靭な体幹を使い天を仰ぐいわゆる「軟体芸」といった強力な武器まで持ち合わせるぺーにとって、今回は連覇を目の前にした重要なバトルだ。

相対するゆーきちの顔にも、緊張が走る。

ゆーきち「ぺーとは元々なかよしなのもあり深く知っていたのですが、とにかく戦うのが怖い相手という印象です。
というのも彼も僕と同じで幅広くなんでもこなせるタイプでかつレベルも高く、さらに軟体技という彼特有の武器も持っているのでもうお互いのスタイルのぶつけ合いになるというか。どういった技で戦うか決めるのが本当に難しい相手でした(笑)」

あらゆる技を使いこなすオールラウンダーという点でこの2人はスタイルが似ており、「評価軸をずらし自分の土俵で勝負する」がセオリーのヲタ芸バトルにおいてお互いに相性が悪い。そしてぺーは逆に「軟体技」という誰とでも評価をずらせるリーサルウェポンを持っている。
実力の離れた相手にはあえて軸を揃えて差を見せ、実力の近い相手には軟体技で差をつける。それがヲタ芸バトラー”ぺー”の強さの秘訣だ。

 

じゃんけんに勝利したゆーきちはここでも先攻を選択。後攻有利と言われがちなバトルだが、実力の近い相手にも強気に自分のスタイルを貫いている。

アルケー「では参りましょう!準々決勝第一試合、先攻、ゆーきち!バトル~?」
全員「「「「「スタート!!!」」」」」

流れたのは仮面ライダーキバ挿入歌より「Supernova」。
仮面ライダーキバの劇中最終強化フォームのテーマソングであるこの曲は、特撮ファンからは「処刑用BGM」とまで呼ばれており、ヲタ芸バトルの場においても高頻度で使用される激アツな選曲に歓声が上がる。
ゆーきちもサビ前から「この気持ちの行き場教えて」の歌詞に合わせて動きノリノリだ。

そして次の瞬間、焚いた2本のサイリウムを右手に集め、引き絞った!

放たれたのはねぷオリジナル「呂玲綺」。サイリウムの握り方、構えと初動、流れるような連続斬りが特徴であり、右手で✖の形に持ったサイリウムを突き出す動きから始まる技だ。

ゆーきち「一連目の『呂玲綺』は親友であるねぷのオリジナル技です。初動のインパクトがとにかく強い技で、使用頻度も高くみんなも知っているので一発目に使用し勢いを作りに行きました。またぺーと差別化できる部分として、自分は「止め」の動きがすごく得意なので、それを見せれることもこの技を選んだ理由のひとつです。」

ゆーきちを知りバトルを知る者なら必ず知っていると言っても過言ではない呂玲騎。その初動のインパクトにさらに会場のボルテージも上昇。中終盤にも止めの尺を長く取るアレンジも挟み、自分の強みを明確に押し出し2連目へ。

 

そして2連目、繰り出すのはゆーきちオリジナル「ユーフォリア」。
ユーフォリアは所属チーム「BKST~僕の考えた最強のトーチ軍団~」のメンバーがそれぞれ、リーダーである”らて”の代表作「ナルメア」の派生技を作成したうちの1つである。
直近に作成された、かつゆーきちの世界観が色濃く顕れた技だ。

ゆーきち「二連目の『ユーフォリア』は僕のオリジナル技で、足を軸にして一回転したり、足を絡ませるトーチが特徴的な技です。そのどちらの要素も難易度がかなり高くてリスキーではあったのですが(実際ちょっとよろけました)、お互いの土俵である火力勝負よりも自分にしかできない技術で勝負するのが良いと判断してこの技を出しました。 」

壇上に降りムーヴを見ていたぺーも、満を持して繰り出された新技に興奮し膝立ちに。
「最強のトーチ軍団」の一員に恥じない高難度の円軌道の連続、そしてナルメア派生の中でも異彩を放つ独特の世界観、他の誰にも真似できない特異な終盤のトーチ。
中盤のプレーデと呼ばれる動きの部分での円軌道の乱れは確かにあるものの、いずれも「ゆーきちにしかできない」と言わせしめるには十分な圧倒的ムーヴがそれを気にさせない。

必殺技とも言える2技を通し、ゆーきちのムーヴが終了した。

ゆーきち「本当に技の選択が難しくてバトルが始まるギリギリまで悩みましたが、結果的に火力勝負しながらも上手く差別化を狙えていたのかなと感じています。」

 

そして次はぺーのターン。

アルケー「そのまま参りましょ~う!後攻、ぺー!」

ぺーが壇上に上がると同時に、流れたのは「戦国BASARA 劇場版-The Last Party-」より「FLAGS」。
男性ボーカルが歌い上げる疾走と情熱の歌に、会場は再び熱狂。

そしてぺーはサイリウムを焚き、額の前に右手を、左手は切り下ろして真っ直ぐに。
極端な前傾姿勢、ここから繰り出されるのは間違いなくゆうちゃまオリジナルの「RUUNA」シリーズだ。

「チェック、セット、オープン!」

根強く熱狂的なファンがいるRUUNAを前に、会場は怒号に近い歓声が巻き起こる。

実際のムーヴ↓

放たれたのはゆうちゃまオリジナル「RUUNA 【STREAMBURST】」。

名前の通り、巻き起こるのは流れるような立体軌道。足を引いて溜める、足を軸に一回転する、前に踏み込んで大きく腕を振り回す。円に近い斬りの軌道もあればトーチも使う。ヲタ芸の中でここまで立体的に円軌道を描き出す技はもはや珍しいとも言えるだろう。

ゆーきちが「ユーフォリア」で小さく精緻に円軌道を描くとすれば、ぺーが「RUUNA【STREAMBURST】」で描いたのは巨大で豪快な円軌道だ。

誰でも知っているとは限らないが熱狂的なファンに刺さる、しかし動きを見れば誰でもその凄まじさを実感する1連目が終了し、そのまま2連目へ。

 

2連目、繰り出されたのはさとしゅんオリジナル「深蒼」。もちろん出してきた。軟体技である。

抱え込むように大きく円を描いた後、軟体技特有の大きく天を仰ぐ体勢へ。
そして地面と背中が平行になるまで反り返った体勢で16トーチと呼ばれる動きに。もはや人間にこんな挙動ができるのかとすら疑いたくなる絶技に大歓声、さらには笑い声まで響き渡る。

そのまま弥七ずらし、技の終わりにはロマンス。
最後には高まりのあまりサイリウムを放り出して軟体しながらフィニッシュ。

ペーのパフォーマンスも終了した。

 

アルケー「ではジャッジに移ろうと思いますが…あ、ジャッジが頭を抱えています!」

ゆーきちにしか表現できない止めと動き、圧倒的なキレを描き出した呂玲騎
技術的にゆーきちにしかできない、ゆーきち本人すらもリスクを感じるほど高難度のユーフォリア
ぺーの持つハイレベルの技術だからこそ流れるようにできる、高難度のRUUNA【STREAMBIRST】
体幹と筋力、そして柔軟性。ぺーの身体的な武器を余すことなく活かした深蒼

ジャッジが頭を抱えるのも無理はない。
自分しかできない最強クラスの個性のぶつかり合い。即座に勝敗をつけるのは熟練のジャッジ3人でもあまりにも難しい。そのくらいハイレベルの戦いだった。

沈黙のまま流れる数十秒。ゆーきちとぺー、双方の顔にも期待と不安の混じった緊張が浮かぶ。

アルケー「それでは参りましょう!3、2、1、ジャッジ!」

ゆーきち 2-1 ぺー

票が、割れた。

ゆーきち「ぺーとの戦いは票が割れました、本当に強かった…!怖くて楽しい戦いでした」
ぺー「非常に悔しかった、ほんとに。次は勝ちます」

準々決勝 勝者 ゆーきち。

 

 

 

準決勝 ゆーきちvs的野美青愛してる(たかけん)

第三戦、やはり壇上に上がるのはバトル慣れした強者だ。

2005年生まれ東京勢、たかけん

若く勢いのある通称05勢、その中でもバトルにおいては特に勢いを見せるたかけんは、基礎を重点的に固め、トーチや軟体などの飛び道具を使わない。純粋なヲタ芸の「上手さ」で勝負するバトラーだ。
過去の大型大会での優勝経験もあり、その実力は語るまでもないだろう。

たかけんはエントリーネームで「的野美青愛してる」と推しの名前を背負い、負けられない背水の陣を自ら敷く。
先ほどのぺーと同じく、バトルへの想いというものが溢れているのが窺える。

ゆーきち「たかけんはバトルだと僕の一世代後ぐらいから頭角を現してきた印象が強くて、05の中でもトップクラスに実力のある打ち師です。
彼は特に基礎力がずば抜けて高くて、技の精度で言えば自分よりも優れていると思っています。なのでとにかく自分の土俵で戦って押し切って勝つことを強く意識しました。」

 

例によって先攻はゆーきち。

アルケー「バトラーの皆さん、大丈夫でしょうか。そのまま始めたいと思いますが…」

ここまで予選合わせて4戦目。疲れはもちろん、技の選択肢もだんだんと絞られバトラー達も険しい表情に。
少しのタイムが設けられる。

息を整え、技リストが書かれているのだろうか、スマホをちらりと見て、ゆーきちが親指を立てた。

アルケー「大丈夫?いける?オーケー!それでは参りましょう!準決勝第一試合、先攻ゆーきち!バトル~?」
全員「「「「「スタート!」」」」」

流れた曲は…イントロに3秒間の空白。客席から「なんだっけこの曲?」と声が上がる。そして、

遥かな宇宙 さまよえる光だって

流れた曲は、機動戦士ガンダムAGE OPテーマより「AURORA」。
曲を理解した全員が、腕を掲げる、飛び上がる、様々な形で沸き上がる。

実際のムーヴ↓

サビ1連目、繰り出したのは航平オリジナル「風雅」。ウインドミルなどの円形の動きを詰め込みつつ緩急を加えることで、光の軌跡が美しく力強く見えるのが特徴の技だ。

ゆーきちにとっては過去に「風雅はこの世で一番上手いかもしれん」と自画自賛したほどの自信を持つ技だ。

ただし今回は中盤にクロールのアレンジを入れるタイミングで体の軸がブレ、体勢を崩したのがマイナスポイントに。

ゆーきち「一連目は『風雅』のアレンジを使用しました。僕がバトルでよくやる本来より手数をとにかく盛りまくるアレンジで初速を出しにいきましたが、少しよろけてしまってかなり危なかったなと記憶しています。」

後半は持ち直し、続いて2連目。

 

繰り出されたのはゆーきちオリジナル「朧霞」。同郷出身の打ち師であるねこじたのオリジナル技「朧刀」の派生であり、ゆーきちの得意とする「静」の緩急が十全に生かされた必殺技のひとつだ。

ゆーきち「二連目の『朧霞』は僕のオリジナル技でありねこじたさんの『朧刀』の派生です。たかけんと差別化するにおいてトーチは外せないなとなり、オリジナル技かつトーチが含まれておりインパクトを十分にだせるこの技を選択しました。 」

満を持しての必殺技の登場に沸き上がる会場。技の途中、「静」の動作の中に見えるシルエットの美しさと技術の高さに、ある人は息を呑み、ある人は歓声と爆笑の声を上げる。

最後はロマンスで締め、減点こそあれど自分の強みを活かし切り、ゆーきちのターンが終了。
続くたかけんに向かって手を振るなど、お互いの仲の良さも窺えた。

かわいい

 

 

続いて、的野美青愛してる(たかけん)のターン。流れたのは…

私は愛を知った

アニメ「純潔のマリア」オープニングより、「Philosophy of Dier world」。
王道のアニソン。真っ直ぐで力強いメロディの曲であり、たかけんの得意とする基本技を見せるにはぴったりの選曲だ。

会場からも「うおやば!」「愛してんじゃねーか!」と声が上がる。

実際のムーヴ↓

サビ1連目、放たれたのはジャガルオリジナル「シツライ」。中盤の円軌道や終盤の左腕を引き抜く部分など、昔ながらの技にありがちな技術と渋さを見せる技だ。

たかけんの得意な範囲は昔ながらの渋さのある技、飛び道具に頼らないシンプルな技。むろんこの技も例外ではなく、特に技の後半では体重移動とキレに磨きがかかり会場からも「うま!」「上手い!」と純粋な称賛の声が飛ぶ。

そしてサビ2連目、今度はイナオオリジナル「イナオスペシャル」。初動のクワガタが特徴なのはもちろん、体重を残しながら曲線を見せていく軌道にも味がある技だ。

緩急と下半身の安定感もアピールし、たかけんのパフォーマンスも終了。

 

アルケー「ではジャッジの方に参りたいと思いますが、、、ジャッジの準備はまだのようですね」

ここでも頭を抱えるジャッジ。お互いに評価軸を限りなくずらした上での真っ向勝負であり、ジャッジも判断に悩むバトルとなった。

やがてジャッジもそれぞれ準備完了の合図を出し、結果が決まる。

 

アルケー「それでは参りましょう!3、2、1、ジャッジ!」

ゆーきち 3-0 的野美青愛してる

票は3-0となったが、この試合ではジャッジ3人それぞれが僅差でゆーきちに上げた結果の3-0だったように思えた。
次のバトルでは結果は逆になるかもしれない、それほどに伯仲したバトルだった。

ゆーきち「正直よろけたのもあってかなり怖い戦いで負けるかもとヒヤヒヤしましたが、二連目の調子が良かったので巻き返してなんとか押し切ることができたのかなと思っています。(多分勝った時この日一番デカいガッツポーズした)」

たかけん「次は絶対勝つから待っとけ!!!」

 

 

決勝戦 ゆーきちvsミクト

アルケー「それでは、決勝ということでですね。リュウセイグンvol.9決勝、これから行っていきたいと思います。」

予選から数えて5回戦目。長いリュウセイグンの舞台、最後となる決戦が始まろうとしていた。

アルケー「今回はですね、1ムーヴということで、魂の1ムーヴで決めていきたいと思いますので、全身全霊本気を出して悔いの残らないヲタ芸をしていただければと思います。」

普段のバトルシーンでは2ムーヴのことが多い決勝戦だが、直前になって異例の1ムーヴと発表。ざわめきが生まれる。中、幕は下ろされた。

アルケー「それではお呼びいたしましょう。リュウセイグン決勝戦!ゆーきち、ミクト!」

そして壇上に上がる2人のバトラー。ここまで上がってきた実力者を前に、期待が膨らむ。

今回ゆーきちの対戦相手として壇上に上がったのは、ミクト

長崎県出身の2002年生まれ、ヲタ芸歴約8年。

[所属グループ]

  • NoXYz
  • BKST ~僕の考えた最強のトーチ軍団~

[主な戦績]

  • MAN OF THE CYALUME DANCE EX アニソンサイド 優勝
  • TOKYO ROMANCE PARK 14 優勝
  • GinyuforcE CUP 優勝
  • RE:melt Osaka vol.1 優勝
  • CPレースTOUR 2023 総合優勝
  • その他多数

CPレースTOUR 2023総合優勝、つまりはゆーきちと同じく過去年度におけるヲタ芸の日本一であり、パワフルで迫力のある基本技、正確かつ流麗な軌道のトーチ技などあらゆる技を高水準でこなすオールラウンダーだ。

じゃんけんで勝利したのはゆーきち。

アルケー「ゆーきちが勝ちましたが、先攻後攻どっちを選びますか?」
ゆーきち「先攻でー!!!(即答)」

ここでも自分のスタイルは変えず、先攻を貫き通すゆーきち。

そして今回はバトルの前に、意気込みをアルケーが質問することとなった。

ゆーきち「そうですね、直近でバトル1つ優勝しているので、まあ初めて、連勝を今回狙おうと思ってます。元々2ムーヴだと思っててちょっとやばいなと思ってたんですけど今回1ムーヴということで、キュッとね、2倍に詰め込ませていただこうと思ってるので…!

会場を破壊します!」

そう、予選から数えて既に4回の闘いがあり、それまでに消費した体力は計り知れない。特に低重心と高機動、体にかかる負荷の高そうなヲタ芸スタイルのゆーきちにおいては尚更だろう。
そんな疲弊したゆーきちにとって、2ムーヴはリスキーだったものの今回は1ムーヴ。最後に残った力を1回に集中すれば勝ちの目が見える、有利な展開だ。

しかし、会場を破壊するとまで豪語し勢いづくゆーきちの意気込みを笑い飛ばすミクト。

ミクト「こんなこと言ってますけど、俺、1回もゆーきちに負けたことないんで(笑)

ゆーきちを破壊しようと思います。」

ゆーきちとの1対1では負けたことがない。展開では不利でも相性では有利だと宣言するミクト。
最終戦、どんな闘いになるのだろうか。

 

と、そこでDJ席のクロフォードからバトラーに向けて質問が。

「DJどっちがいい?俺か小指か」

なんと最後の最後、DJをどちらにするかを先攻のゆーきちに委ねた。
じゃんけんに勝ち先攻を選択したゆーきちにとっても嬉しい誤算である。

「小指さんで!」

選択したのは、KOYUBI。

ゆーきちが総合優勝した2021年のバトルでは、いつもDJ席には小指がいた。その小指の実績、手腕、そして曲選への熱い想いを信じての選択だったように見えた。

 

アルケー「それでは決勝やる前に皆さんちょっと聞いていきたいと思います。決勝戦やりますが皆さんまだまだいけますか!」
会場「「「イエーーーイ!!!」」」
アルケー「これから決勝始まるけども、こいつらに負けないくらい会場破壊する気ありますか!」
会場「「「「「イエーーーーーイ!!!!!」」」」」

アルケー「それでは参りましょう!リュウセイグンvol.9決勝戦、先攻:ゆーきち!バトル~?」
「「「「「「スタート!!!!!」」」」」」

流れた曲はNeru作曲の東京テディベア。激情が込められたような激しく早いテンポが愛される、大人気のボーカロイド曲だ。

「っしゃ行くぞぉぉ!」

サビ直前、ゆーきちが大きく吠える。
沸き上がる会場はもちろん、ゆーきち本人のボルテージも最高潮に達していた。

オーディエンスも呼応し、「頑張れ!」と力強い声援が上がる。

ゆーきち「ミクトさんは言わずと知れたバトルの強豪で、僕も過去に敗北したことがあります。彼は試合数を重ねても動きの質が落ちない安定感が僕とは対照的な強みで、なおかつ軌道も綺麗で迫力があるので攻守ともに優れている印象があります。
体力的にもかなり限界が近く戦い方をすごく迷っていたのですが、今回の決勝は2ムーブではなく1ムーブだと聞き『なら全部出し切って最大瞬間火力でぶち抜いてやる』と気合いを入れたのを覚えています。」

実際のムーヴ

 

1連目、ゆーきちが選んだのはゆーきちオリジナル「霞ヶ門」。
火力のあるヲタ芸の基本技として有名な「門系技」、その中の一つ、ゆーきちが本家として所有する技だ。
この技はゆーきちの「霞シリーズ」の一つとしての側面もあり、それゆえに「ゆーきちの世界観が反映された基本技」としてこれ以上ないだろう。

特徴とされる4方向に放つ初動の後、一瞬腕を溜めてから真上に突き上げるアレンジ。
後半の足を上げる部分では今までよりもさらに強く踏み込み、特大の足音が鳴る。

「東京テディベア」という超高速曲に置いてきぼりにされないスピード、その中で光る卓越した技術。
いずれもゆーきちだからこそ可能なパフォーマンスに違いない。

ゆーきち「一連目の『霞ヶ門』は僕のオリジナル技で、スタンダードではありながらも迫力やシルエットも魅せられる技です。
一連目にも火力の強い技を持っていくか迷ったのですが、曲がかなり早かったので技術のバランスを取りつつ二連目で最大火力を出すためにこの技を選択しました。
今思っても二つ高火力の技をやってヘロヘロになるよりも全体の緩急が際立つのでいい選択だったと思います。」

 

そして2連目、右足を上げた体勢から放つはゆーきちオリジナル「青雀黑」。
もはやゆーきちの代名詞とも言える、バトルの場に出るならだれもが知る「青雀」。それをさらに発展させた派生技だ。
数々のバトルシーンの決勝戦で繰り出してきた青雀黑は、ゆーきちにとって必殺技に等しいだろう。

踏み込みの初動の後、×を描きながら体に巻き付けるようなトーチに歓声が上がる。
このトーチは奇しくも対戦相手のミクトが得意とし、通称「ミクトーチ」とも呼ばれる動きだ。

ゆーきち「二連目の『青雀黑』も僕のオリジナル技で、現状自分ができる全ての技の中で一番強いと断言できる技です。 前半の体をねじ込むような動きの連続も上手くいきました」

低重心かつねじ込むように体を動かし空間を切り裂く。このイメージをそのまま出力できるのは、ヲタ芸界隈広しと言えども小柄で可動域が広く、スピードを活かして鋭い軌道が出せるゆーきちしかいないだろう。

ゆーきち「が、どちらかというと今回のポイントは後半で。」

注目は羽ばたきの後、後半に突如として織り込まれたアレンジムーヴだ。
突如として一歩下がりながら腕を引き絞り、ミクトーチを交えながら跳び上がりフュギュアスケートのような一回転。
まさしく飛翔する鳥や、竜巻を思わせる前代未聞のダイナミックなムーヴを、ゆーきちは大会終了後、「絶対倒すためのムーブ」と語った。

ゆーきち「後半は『一度後ろに下がって、回転しながら切り裂くような軌道を描く』という本来の型とは全く違うアレンジverを出しました。
これは前から温めている新技のムーブで、結構リスキーな動きではあったのですがこれぐらいやらないと勝てないと思ったのでチャレンジしてみました!」

 

唐突に披露されたゆーきちの新ムーブ。会場の興奮も冷めやらぬままに、後攻ミクトのターンが訪れる。

曲はwowaka作曲、「アンハッピーリフレイン」。東京テディベアに張り合うように、テンポが速く暗い激情の込められたボーカロイド曲が選曲された。

ステージ中央に立ち、頭の上でサイリウムを焚き、大きくスタンスを開いて陣取るミクト。
腕を軽く回しながら胸の前でクロス、そして上半身を大きく溜め…

開放。

放たれたのはミクトオリジナル「エクスプロード」。その名の通り爆発するような火力のある初動と、その後の力強く流れるような軌道が特徴的な技だ。

ゆーきちのヲタ芸を竜巻に例えるならば、ミクトのヲタ芸は火砕流のようだ。
大きく力強いヲタ芸だが、そこには摂理に沿った「流れ」の美しさが存在する。

技の後半には「ミクトーチ」ももちろん入っており、直接対決を一度制したが故の余裕と貫禄を感じさせた。

 

そして1連目が終了。顔の前でデフラワーと呼ばれる動きで小さく円を描き、両腕を腰溜めに構える。

この構えから放たれる技は1つ。そう、ミクト&U-Na合同オリジナル「穿血」だ。
ミクトの代名詞「十拳剣・鮮血」と共同製作者であるU-Naの代名詞「Beスネイク:穿」の合体であるこの技の特徴は、初動の瞬間から繰り出される圧倒的手数のダイナミックなトーチ。
これを実現できるのは、ミクトの持つ流れるような正確さと巨大な軌道があってこそだ。

お互いのオリジナル技、お互いの個性を全力で発揮したムーヴの激突。
まさしく「会場を破壊する」と言って差し支えない頂上決戦が終了した。

 

 

ジャッジが結果を出すために舞台裏で協議し、その間暇になった会場はMCを交えた雑談タイムへ。

アルケー「ムーヴを終えたね、今この状況をゆーきちさんに感想を伺いたいと思います」

ゆーきち「ヤバいっすねこの人(ミクトに向かって)。ミクトさんの凄いところって、最後まで技の勢いとか技術のアベレージが全然落ちなくて、やっぱり地力がしっかりしてるからこそちゃんと最後までコンディションを維持できて、テクニカルなこともできるのは凄いなって思います。でも勝ちたいです」

アルケー「そしたらそのままミクトに聞いていきましょう。今のお気持ちをどうぞ」

ミクト「ゆーきち色々言ってくれたんですけど、自分がゆーきちに思ってるのもそうで。技の火力とか体幹とか、ちゃんと形が崩れないでできるのは本当に凄いなって思います。
最後、オリ技-オリ技でやってきたんで。自分もオリ技で返して、良いバトルになったのかなと思います。まあ、俺が絶対勝ちます」

アルケー「お前ら相思相愛かよ!?お互いにお互いを好きすぎるだろ!ということでね、みなさんの気持ちを代弁しますね、俺らが一番こいつらのことヤバいと思ってますからね。そんなヤバい同士の対決でリュウセイグンの決勝戦が終了しました」

結果が決まり、ジャッジ代表のHIDEをはじめとしたジャッジたちが壇上に上がる。

アルケー「それでは、結果発表に参りましょう。リュウセイグンvol.9、優勝者は…!?」

ゆーきち!

 

上位者インタビュー

優勝:ゆーきち

ありがとうございます!!!

個人的な話になるんですけど、ギニューなくなった(解散した)じゃないですか。で、僕がいったんソロの活動になって、今自分がすべきことは何だろう?って。
今僕ができることはバトルにたくさん出たりジャッジをやったり、自分のできる範囲でヲタ芸界隈を盛り上げていきたいなという思いがあって、その一環として最近出れるバトル全部出てて。

この前もリワメモ杯ってバトルがあって優勝させていただいたんですけど、今回も自分の貢献できる範囲で精一杯戦っていこうという思いがあったんで、こうして(自分が出た中では)2連続で優勝することができて、最近地力とかも上がってる自覚があるので、1つ結果としてそれが証明できて良かったなって思います。

今日めっちゃ不安だったけどマジで勝ててよかった!ありがとう!!!

 

準優勝:ミクト

まずはありがとうございました。

ここ最近バトルとか優勝できなかったんで優勝したかったんですけど…今のところでも、ゆーきちとは1勝1敗なので、次は絶対勝ちます。ありがとうございました!

 

3位:的野美青愛してる(たかけん)

的野美青さんが神でぇ…的野美青推してると上手くなってぇ…

というのはいったん置いといて、最近バトルにもちょこちょこ出るようになって、最近上がれるようになってきたなって自覚があって、バトル楽しいなって。バトルも運営してるので良ければ来てください!

ありがとうございました!

審査員講評

HIDE

この大会で長年審査員をしてきて思っていたことなのですが、今までのリュウセイグンでは予選通過者とそれ以外の人達に大きな実力差がありました。
しかし、今大会では出場者全体のレベルが上がっていて誰が予選を通過してもおかしくなかったです。
リュウセイグン常連の選手達の成長を特に感じ、レベルの高い大会になったなと思いました。

優勝したゆーきちですが、予選のパフォーマンスは1人だけ別格のものでした。
彼の直近のバトル成績を見ていると予選は強いのですが、トーナメントに弱く優勝までは辿り着かない印象でした。
バトル経験を重ねてきたことで”バトルの上手さ”という部分が成長していることを今大会では感じることが出来ました。

そして準優勝のミクト
彼は最近バトルでの調子がイマイチだったのですが、今大会では全盛期を彷彿とさせるパフォーマンスで調子の良さを伺えました。

決勝戦についてはBPMの速い曲が流れた段階ではゆーきちに分があるなと思いました。彼の1番の強みとも言えるスピードが活きるので。
逆にミクトは強みのサイズ感、技の正確さが活かしにくいかなと思いました。

案の定ゆーきちが持ち前のスピードを活かし文句なしの優勝だったなと思います。

 

ミザエル

名古屋のバトルイベントでよく審査員をさせて頂く自分ですが、今回のリュウセイグンのバトルにエントリーして頂いた方々はかなりテクニックの高い技やムーブをされる方が多くて、名古屋の「技」自体に”個性”を盛り込む感じとはまた別の”個性”を感じました!
トーチはもちろん、迫力のダンスムーブやリズムキープなど本当に多彩で呆気に取られてしまいましたw

決勝でぶつかった「ゆーきち」と「ミクト」正直2人とも人間のする動きではありませんでしたね。
正直勝敗を決めるのに僕が一番時間かかってしまいました(笑)

技術的な事を話させてもらうと、準優勝のミクトはサイリの軌道、それに伴った全体の動きのバランスにおけるパラメータが高過ぎますw予選からどの技の軌道も美しく、パワー系の動きも繊細なトーチの動きにもしっかり体重移動を乗せつつ綺麗な芸が出来るのは本当に凄いです。リズムゲームで例えたらほとんどのタイミングで”Perfect”を叩き出してるような、本当にオールラウンダーだなと強く思いましたね。

正直に言うとあわよくば僕もミクトにテクニック系の技を是非とも教えて頂きたい。と強く思うほど彼の軌道の綺麗さに惹かれている一人だったりします(笑)

優勝したゆーきちも予選から会場をぶち壊す勢いでしたねw今回のバトル、他にもリズムに合わせてダンスムーブを多く取り入れる方が多かったですが、ゆーきちはヲタ芸単体の技術もムーブの技術もズバ抜けていました。僕が思った勝利の決め手は技術面で言うと、

昔、ヲタ芸界の神”ばっくほーん”さんとリプライをした際に

「人間の身体の構造の中で一番重いのは頭蓋(頭部)である」

と彼は仰っていました。
ゆーきちは動きの中でスピード感と高低差のある体重移動が際立っていました。それは低い姿勢の状態でも頭蓋の位置までしっかりと低い位置までキープする事が出来ており、腕を振ったりするより先行して頭部がしっかり動く事によって爆発的なスピード、キレが生み出されているのだなと。そしてそのスピードに耐えうる脅威的な体幹も日頃どれだけ練習と研究を重ねているのか、この子…末恐ろしいと思いましたね。突出したステータスの持ち主ですよ。

決勝前にもコメントで会場破壊する勢いで優勝勝ち取りますと言っていましたが、ホントにその勢いでした!

今回のアツいバトルを見て、機会があれば自分もバトルに参戦したいなとやっぱり思わせられちゃいましたね(笑)

 

よしき

みなさんお疲れさまでした。

やっぱベスト16からは本当にレベル高い試合いっぱい見れてめちゃくちゃ楽しかったです。
決勝の2人のバトルは特に見ごたえあって、正直ゆーきちは予選から頭1つ抜けてましたね。流石だなと。

こんなん見たら僕もバトルのモチベ上がっちゃいますね。

 

 

まとめ

ゆーきち「今回の自分のバトルの全体的な感想としては『戦い方が上手くなった』です。相手を分析して技選を考えつつも、しっかりと自分の土俵で戦うことも両立して意識できていたのが勝因の一つだと感じています。 これからもバトルには参加しようと思っているので、ぜひ応援よろしくお願いします!!」

今回はリュウセイグン優勝を含め数々のバトルで目覚ましい戦績を残し続けるプレイヤー「ゆーきち」の強さと魅力を取材した。この記事を通して、彼の魅力が多くの人に伝わってほしい、そう思うばかりである。

しかし、これだけは言わせてほしい。

ゆーきちが常軌を逸して強いのは事実だ。しかし、諦めずに挑み続けてほしい。

ゆーきち自身が宣言している通り、彼は今後も様々なバトルに出場し、その場で自身の強さを遺憾なく発揮するだろう。しかし、ゆーきちが求めているのは「それでもなお立ち向かおうとしてくるライバル」なのだろうと思う。

バトルは切磋琢磨の場でもある。多くの才能の原石がぶつかり合い磨き合い、やがて輝く宝石となって空を走ることを切に願っている。

 

取材協力者一覧

リュウセイグン運営
クロえもん
ゆーきち
ミクト
たかけん
ぺー
きよはる
アルケー
KOYUBI
HIDE
ミザエル
瑠璃玻璃

 

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